本庶佑教授がコロナを語る・BSTBS「報道1930」

6月29日(月)BSTBS「報道1930」における本庶佑教授の発言だけを抜き出してみた。本庶佑(たすく)氏は京都大学特別教授で2018年にノーベル生理学・医学賞受賞。米国立衛生研究所、カーネギー研究所で免疫学を研究。2012年ドイツ「コッホ」賞を受賞している。
キャスター松原耕一、ゲストには本庶氏の他、津上俊哉 久保田文 松本哲也各氏が発言している。

科学的基礎が示されない「モニタリング指標」
東京が突出して感染者が増えている状況をどうご覧になりますか?
本庶:以前に抗体の陽性率が0.1%という値が出ております。そうしますと、これを考えると日本全国で約12万人。ですから現在の感染者と言われている人の5倍はいわゆる無症状の人がいるということになりますから、検査を広げていけばこの数は増えます。問題は、こういう風にして捕捉された人をきちんと隔離しているのかどうか。これを隔離していくことが重要であって、まあ、私は正直言って東京都のモニタリング指標の数字がどういう根拠で出てきたのかという科学的基礎が全く示されずにですね、数字がポンと出てきているというのは大変いかがなものかと思っております。またこの数値を状況によって自由に変えるとなるならば、まさに何をかいわんやという感じですね。

PCR検査の拡大を
東京都としては何をどうすべきだと本庶先生は思われますか?
本庶:国内には私の推計では5倍くらいの潜在的感染者、無症候群の人がいるわけですから、その人たちをもっと検査を拡張して、きちっと隔離をして行くということによって、国内の更なる感染拡大を防ぐ、これが一般的に有効な方法だと思います。
―「攻めの検査」と言われていますが、それをもっとやるべきであるということですか?
本庶:これは当然です。PCR検査をもっともっとやらないと、ここで単に数を減らしてですね、捕捉された数が減った増えたということで一喜一憂しているのは全くナンセンスだと思います。

外国からの侵入阻止が焦点
世界の状況をどうご覧になりますか?
本庶:これは、世界全体としてはやはりどっちかと言うと、経済のほうを優先したいという国が多いわけですから、これはもう完全にプレイド・オフの関係ですから、やむを得ないですね。ですから、我々は他国のことには干渉できないですから、わが国における感染者をどのくらい防げるか、これを最大に考えざるを得ない。ですからそこで重要なことは、外国からの侵入をどうやって防ぐか、これが目下最大の焦点だと思います。
アメリカ、ブラジルなり、まだ拡大しているところからの感染をどうやって日本に呼び込まないで止めるかということですか?
本庶:「検疫」ですね。結局、外国から侵入して来るのをどうやって防げるか、これが今後の第2波、第3波における最大の焦点です。

日本は幸運な国
本庶先生、前に提言を出された時に、「科学的事実を直視せずに直近の経済的損失を恐れて対策を先延ばしにした指導者は皆失敗した」とおっしゃいました。本庶先生は、日本は今の段階でどう評価されていますか?
本庶:日本は大変な幸運な国であったと思います。対策はそれほど立派だとは思えないけれど、これは世界的な評価ですね。ですから、この幸運をいかに持続させるかと、これには、ともかく外国から一度入ってきましたけれど、今後入ってくることをいかにして防ぐか、これはそんなに難しいことじゃなくて、検疫をいかにきっちりやるかと、そこにどれだけのお金と人を投入するかと、単にそれだけの意思決定だけだと思います。

検疫での全員PCR検査
―今後4か国とまず国を開こうという動きがあります。開いてもいいけども検疫をしっかりやって、PCR検査を含めてそこの水際をきっちりやれということですか?
本庶:ええ、検疫の所で全員PCR検査をやるということは全然難しくないんです。自動PCR装置を千台くらい入れてですね、きちっとやれば簡単にできます。

「8割」の根拠が曖昧
そういう意味で、前のように「ステイホーム」「8割削減」ということではないんだという見方があります。これをどうご覧になりますか?
本庶:8割とか7割とか5割という数字がどういう根拠で出てきたものかと。まあ、何らかの数式に係数を入れられたんだと思いますが、数式そのものではなく、その係数は何を基にしているかということを全く情報公開されていない。そこが問題だと思うんですね。今、幸いにして抑えられているこのチャンスに、更なる侵入を防げるかどうか、ひとえにこれだけと思います。

米国のワクチン開発は無謀
米国ワクチン開発「ワープ・スピード(超光速)作戦」(開発プロセスを3カ月に短縮、来年1月までに3億回分の供給を目指す)を、どうご覧になりますか?
本庶:ワクチンあるいは免疫学を知っている人なら、極めて無謀なチャレンジですね。これまで、このワクチンはフェーズ3まで行って、有効性までは行ったけれども、副作用でドロップアウトしているというのが圧倒的に多いんです。ワクチンというのは患者に打つのではなくて健常人に打つんですね。そこで健常人で事故が起こるということになりますと、ワクチンを打って死ぬのか、コロナで死ぬのかどっちがいいかというトレードオフになります。これはですね、過去にもアメリカは痛い思いをしているんです。1976年、これは日経新聞にも出てましたけど、インフルエンザは大量にワクチンを作って、やってみたところ、いろんな副作用が出てきて、全部ドブに捨てました。これと同じことになる確率は極めて高いと私は思います。

短期間でのワクチン開発は幻想
中国ワクチン開発「健康シルクロード作戦」/治験段階にあるワクチン世界25種類中12種類が中国関係。中国はどう評価されますか?
本庶:私は中国のこまかいことは知りません。しかし、一般論として言いますと、中国から何か新しい薬が出たということはないんですね。確かに、中国の医学研究への投資はここ10年くらい格段に増えていますが、医学というものは金をつぎ込めば簡単にできるというような半導体とかそういうものと全然レベルが違います。私は過去の中国の経験から言って、ワクチンができるという風に、私がまあ、賭けをするとしたらアメリカのほうに賭けたい。ただ、要するに短期間にこういうものができると、多くの一般の人に大きな幻想を与えている、これが一番大きな問題です。ワクチンというのは、どんなに考えても何年もかかるものです。これまで半年とか三月で出来たワクチンは無いです。
それでもアメリカに賭けたいというのはどういう思いでしょうか?
本庶:過去の実績、ノウハウ、膨大なものがありますから、これは賭けるんであればアメリカに賭けるべきですね。
でもやっぱりワクチンは難しいぞということですか?
本庶:そういうことです。アメリカでも難しい。いわんや・・ということですね。

ワクチン開発は大学レベルでは無理
ワクチン開発をめぐる国際間の情報戦みたいなものをどう見ていますか?
本庶:まあ、これは政治の問題ですからね、勿論、サイエンスとしては大変残念なことですが、今、これだけ政治が入り組んでいると、こういうことが起こっても不思議ではないだろうと、残念ながら思わざるを得ない。ただ、問題はですね、やはりこのワクチンというのは、大学レベルでは無理なんですよ。まあ、何らかのシーズ(製品化の可能性)が出たとしても、これを大量生産して、それこそ、何千万、何億人の人に供給できるだけの大量生産の装置、ノウハウ、これは残念ながら中国にはないと思います。ですから中国がですね、カナダに生産拠点を持って行ったということは、そういうことなんですね。ここのノウハウは大学ベースではなくて企業ベースなんですね。ですから日本でもこれをできる、開発できる企業はほとんど無いですよ。世界中に供給できるほどの巨大な設備とノウハウを持たなきゃいけないんです。

政治がらみの宣伝
中国の開発も無謀ですか?
本庶:先ほどから申し上げている通り、ワクチンというのは「夢のまた夢」なんですね。そこでこれを利用して「ああだ、こうだ」と言っていますけども、まあ、「Show me the product」ですよ。まず現実的な可能性のあるものというのはオックスフォード大学が一番進んでいるという風に聞いていますけどもね。まあ、正直言って先が遠いです。ここはまさに政治がらみの宣伝に終始していると言わざるを得ない。

オリンピックまでのワクチン開発は可能性が低い
来年のオリンピック、安倍総理はオリンピックに間に合わせたいという思いがあるようですが、ズバリ、正直どうですか?ワクチン、間に合いますか?
本庶:私は、可能性は非常に低いと思います。医学というものは三本柱なんですよ。予防、診断、治療、この三つが医学の基本的なストラテジー(戦略)です。ワクチンというのはまさに予防。診断、これはまさに検査なんですね。今やっている完全自動のPCRというのは開発が進んでいますから、これを早急に投入する。そして治療薬。こう、全部に対してきちっと目配りをして投資をして行かないといけない、そういうのが私の基本的な考えです。

ワクチンより治療薬
ワクチンが難しいとすれば、ワクチンより治療薬なんだと、こちらのほうが早そうだということについてどうお考えですか?
本庶:現実的にはもう、アクテムラ(関節リウマチの治療薬)というのは、かなり報告があって、有用だと、特に重症化した場合にはですね、これをやって死亡をかなり。減らしたという治験データはかなり出ています。日本ではなく外国ですけど。それからアビガンとかは、まだ、いわゆる対称群が取れない。幸か不幸か日本では患者数が減ってますからね。これができない。だけど、臨床現場の医師の感触としては「効いてる」ということですから、こういうことをきちんとしたプロトコル(約束事・規格)を作って組み立てるというのがまず当面やるべきことですね。
ワクチンが難しいならば、日本は治療薬に賭けて行くということのほうが可能性は高いのではないでしょうか?
本庶:当然こっちのほうが遥かに現実性がありますから、ここに投資する。それから、何遍も言いますけど、やはり感染症ですから、感染拡大をきちっと防ぐと、これがまずやるべきことです。ワクチンは正直言って、日本が100億円投入しても結果は出ないです。これは千億単位の勝負ですから。それを考えていかなければなりません。

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