中村哲医師最後の警告・「ペシャワール会報No142」より

戦乱で荒廃したアフガニスタンの大地に1600本の井戸を掘り、「緑の大地計画」を提唱してマルワリード農業用水路を建設、3000haの農地を復旧させ、15万人の難民を帰還させた中村哲医師。2019年12月4日(水)、彼はいつものようにジャララバードの宿舎を出て作業現場に向かう途中、何者かに銃撃され、彼を警護したアフガニスタン人5人と共に亡くなった。73歳だった。
2020年1月25日、浦和で中村哲医師の追悼集会があり、私はこれに参加した。会場受付で「ペシャワール会報No142」と、追悼の意を表した「号外」(2020.12.25発行)を頂いた。ペシャワール会は中村哲医師のパキスタン及びアフガニスタンでの医療活動などを支援し、広報、募金活動を行い、ワーカーの派遣を行なっている団体である。用水路の開削、補修工事はすべて募金によって賄われている。

「ペシャワール会報No142」は2019年12月4日発行となっている。つまり中村哲氏が銃撃された日である。この会報の巻頭に中村哲氏は『凄まじい温暖化の影響』という題の一文を寄稿している。彼は、この文の中で、アフガニスタンの現場を通して地球温暖化を鋭く警告している。
「マルワリード用水路は山腹を這うように作られています。鉄砲水や土石流が通る谷をいくつも通過します。谷といっても、4千メートル級の山から流れてくる洪水や土石が信じられないような勢いで下ってきます。・・・最近の降雨は予測が不可能で、大丈夫と思っていた箇所が鉄砲水で決壊したり通過水量が予想をはるかに超えたりで、その都度マメに補修しながら守る以外にないのです。」
「水の仕事を始めてから15年、干ばつは動揺しながら確実に進行しているように思えます。かつて豊かな農村地帯で聞こえたソルフロッド郡は砂漠化で見る影もなく、スピンガル山麓一帯は僅かにドゥルンタダムからの用水路が細々と潤すにとどまっています。川沿いも気候変化で渇水と洪水が並存し、年々荒れていきます。温暖化の影響はここアフガニスタンでも凄まじく、急速に国土を破壊しています。」
「それでも依然として『テロとの戦い』と拳を振り上げ、『経済力さえつけば』と札束が舞う世界は、砂漠以上に面妖なものに映ります。こうして温暖化も進み、世界がゴミの山になり、人の心も荒れて行くのでしょう。一つの時代は終わりました。」

中村哲氏らがマルワリード用水建設工事をしていた時、上空で米軍のヘリが舞い、機銃掃射を受けたこともあったという。アメリカの武力によるアフガニスタン統治は結局失敗に終わった。世界最大の二酸化炭素排出国として地球温暖化に大きな責任のあるアメリカは、それに無関心どころか、砂漠化と戦っている人々に敵対しさえしているのである。
2018年8月、浦和で講演会を行なった中村哲医師は最後に次のようにアピールした。
・・・・・「戦(いくさ)よりも食糧自給」です。水さえあれば多くの地域が救われます。
地球温暖化も彼らの生死を分けます。温暖化による急な雪融けは河川の洪水を招き、その後水位が下がると取水ができません。人間は、恵みの対象としての自然からの取り分を良く知り、折り合ってやって行かなければなりません。また人と人も和解しなければやって行けません。私は「金さえあれば」「武力さえあれば」という迷信から自由です。・・・・・

12月4日以後PSM(ペシャワール会医療サービス)は活動を停止したが、現在村上優会長のもとに事業活動を再開している。
《ペシャワール会HPより》
▽建設中のマルワリードⅡ用水路(2019.12.21)
20191200_3.jpg
▽キャベツ植え(2019.12.31日本の農業技術指導)
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▽サトウキビ植え(2020.1.16)
20200117_4sugar.jpg

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