カジノ汚職で露呈した危うき「日本の成長戦略」

カジノを含む統合型リゾート(IR)事業への参入を目指していた中国企業側から370万円相当の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は25日、元内閣府副大臣でIR担当だった衆院議員の秋元司容疑者を収賄容疑で逮捕した。(2019.12.26朝日新聞)
5年前、IRについて述べた私の日記を再掲載し、合わせてその歴史的経過を見てみたい。

カジノ法案に反対する(2014.8.25)
通常国会で継続審議となっていた「統合型リゾート(IR)推進法案」(カジノ法案)が秋の臨時国会で再び審議される。これはカジノを合法化する法案で、2020年の東京オリンピックの開催までに、国際会議場や宿泊施設、レクリエーション施設などにカジノが一体となった複合観光施設をつくることを目ざしている。この計画は安倍内閣が推進しようとしている規制緩和や税制優遇に取り組む「国家戦略特区」の一環であり、地方自治体もカジノ誘致に力を入れて、巨大な利益を生み出そうとしている。

この計画を推進しているのは「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)で、自民党を中心に超党派の国会議員206人(2014年5月)から成り、安倍首相、石原慎太郎、小沢一郎がカジノ議連の最高顧問である。会長は元官房長官細田博之。この法案に反対しているのは共産党、社民党だけなので、法案は成立する可能性がある。
私は、このカジノ法案に対して、「ギャンブル依存症増加の危険性」という観点から反対したい。
「ギャンブル依存症」とは、病的にギャンブルにのめり込み、衝動を抑えられなくなる精神疾患である。アメリカではタバコ、アルコール、麻薬などの依存症と同じ病気として分類されている。8月20日、厚生労働省研究班により、「ギャンブル依存症」の疑いのある人が、国内に500万人以上いるという調査結果が明らかにされた。これは成人の5%に上り、世界のほとんどの国が1%前後にとどまるに比べて日本は非常に高い。

その理由は、日本では競輪、競馬などの公営ギャンブル(宝くじも含まれる)よりも、法的にはギャンブルと見なされていないパチンコ・スロットの圧倒的な普及があげられる。パチンコ・スロットはわが国独特のギャンブルであり、その店数は1万2000軒、年間の総売上げは20兆円である。この数字はセブン・イレブンの店数1万3000軒、トヨタ自動車の年商20兆円と比べれば、いかにすごい数字かわかる。日本は世界一のギャンブル大国なのだ。そして、病院を訪れる病的ギャンブラーの8割がパチンコ・スロット依存症である。借金がかさみ、約半数が自己破産などの債務整理をしている。また、大多数の病的ギャンブラーが家庭内窃盗をしている。(「カジノ合法化は何をもたらすか」帚木蓬生・世界2014.7)そしてギャンブルがらみの犯罪は後を絶たない。2011年、製紙会社会長が100億円以上をカジノに注ぎ込み、特別背任罪で逮捕された事件は記憶に新しい。

カジノ解禁はギャンブル依存症の増加の他に、青少年育成への影響、暴力団の介入、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される可能性などの問題点がある。「カジノは本当に経済効果があるのか」という疑問もある。ところが、国民の間ではカジノ解禁の内容についてほとんど知られていないうちに国会で審議が進もうとしている。家庭を崩壊させ、人間の心身を破滅に導くギャンブルで経済成長を図るという発想自体が異常である。アベノミクスはあらゆる悪質な資本主義を招き入れようとしている。
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カジノ解禁法案成立
結局、臨時国会に提出されたカジノ法解禁案は衆院解散(2014.11.21)で廃案となったが、2016年の臨時国会で再び該法案は提出された。その旗振り役を担ったのは安倍首相と菅官房長官だった。安倍首相は2014年5月にシンガポールのIRを視察し、「統合リゾートは日本の成長戦略の目玉になると思う」と語り法案成立への執念を窺わせていた。
大した審議も無かった。衆院内閣委員会での審議時間はわずか5時間33分だった。2016年12月、自民党は審議を突然打ち切り、強行採決を行なった。採決に踏み切ったのが、この度逮捕された秋元議員だった。秋元はその褒賞として2017年8月、IR担当の内閣府副大臣に任命された。秋元は「成長戦略の目玉」推進の尖兵となったのである。野党は内閣不信任案で抵抗したが、自民党、日本維新の会のごり押し(公明は自主投票)の下、12月15日未明、参議院でも可決され、かくして刑法で賭博として禁じられていたカジノは晴れて国家の手で解禁された。

安倍首相と「ラスベガス・サンズ社」の関係
2017年2月、安倍首相はトランプ大統領と日米首脳会談を行なうため訪米した。その際、首都ワシントンで開かれた朝食会で、同席したラスベガス・サンズ社のシェルドン・アデルソン会長が直接、安倍首相にカジノの話を持ち出した。ラスベガス・サンズ社は世界最大の売り上げを誇るIR事業者である。また、アデルソン氏は2016年の大統領選で、トランプ氏に2千万ドル(約22億4千万円)の献金をした熱心な共和党支持者でもあった。米メディアは、トランプ大統領が、ラスベガス・サンズ社の日本進出を安倍首相に要求したと報道した(2018.10.10)。トランプ流強欲資本主義への安倍の完全屈服はこの時から始まったように思われる。

IR実施法成立
カジノは解禁されたが、その施行のためには「IR実施法」が必要となる。
2018年7月の朝日新聞の世論調査では、「カジノ法案の今国会成立は必要ない」が76%に達していたにもかかわらず、7月20日、衆参で40時間ほどの審議時間で与党は採決に踏み切り、かくしてIR実施法が成立した。安倍首相は「我が国を観光先進国に引き上げる原動力になる」と演説した。法案では監督機関である「カジノ管理委員会」の免許を受けた事業者だけがカジノを設け運営できる。IRは全国で最大3か所に設置が認められる。事業者がカジノで得た売り上げの30%をカジノ税として国が得ることになる。国が「胴元」だとすれば、「カジノ税」は「テラセン」か?

ラスベガス・サンズ社と大阪、横浜の利権
2018年12月、ラスベガス・サンズ社のロバート・ゴールドスティン社長は大阪府の松井知事と会見、松井知事は「万博とIRの相乗効果で世界中の皆さんが楽しめるエリアを作りたい。すばらしいアイデアを持っている」とコメントした。ロバート社長は「IRを作るには非常に高い投資が必要。我々は政府から課せられる役割を果たしたいと思う」とコメント。松井知事が属する日本維新の会がカジノ法案成立に熱心に動いたのは、こういった利権もからんでいるのかも知れない。
ただし、2019年8月に横浜がIR誘致を正式に表明すると、ラスベガス・サンズ社は、大阪から横浜に方向転換することを発表した。横浜の林市長は市長選の際は「カジノ誘致は白紙」と言っておきながら、当選後、一転して誘致を表明し市民を裏切った。

主なカジノ候補地
現時点でカジノ誘致を表明しているのは、神奈川(横浜)、東京、千葉、愛知(名古屋、常滑)、大阪、和歌山、長崎で、中でも大阪、横浜が有力な候補地と見られている。2019年11月、北海道は、誘致を見送ることが発表された。IR候補地3か所が正式に決定されるのは2021年後半になる見込み。
なお、横浜ではカジノ反対の市民運動が起こっているほか、横浜港ハーバーリゾート協会・横浜港運協会は「カジノなしの再開発」を提唱して反対している。

カジノ汚職発覚
2019年12月25日、元内閣府副大臣でIR担当だった衆院議員の秋元司容疑者が地検特捜部逮捕された。逮捕容疑は2017年9月下旬(秋元が副大臣になった直後)、中国企業(500ドットコム)のIR事業に便宜を図る見返りとして、東京都内(副大臣室?)で秋元議員が300万円を受領したこと、更に、2018年2月中旬(副大臣任期中)に、秋元議員の家族旅行70万円を500ドットコムに負担してもらったことの2点である。

安倍政権は民主主義の手続きを無視して、強引にIR法を成立させた。「ギャンブル依存症」など、さまざまな問題が発生することが指摘されているのに、十分な議論もしなかった。その背景には、「企業の成長戦略」と称して、特定の業者に儲けさせる安倍政権のペテンの構造が存在することが、またしても明らかになった。カジノ汚職に対して、安倍首相も菅官房長官も、到底、その責任を免れることはできない。

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