「英語民間試験」「記述式問題」に見られる教育の民営化と官民癒着

2020年から始まる大学入学共通テストへの「英語民間試験」導入は、萩生田文科大臣の「身の丈発言」なども原因となり、結局先送りになった。つまり「廃止」でなく「延期」である。この「改革」案はこれまでに多くの問題が指摘されて来ただけに、当初の政府の強硬な姿勢に、「なぜ、そんな生煮えの改革案を急ぐのだろう?」という疑問が生まれるのは当然である。萩生田氏が会見で「自信を持って進められない」と語ったことは、この案についての議論がいかに不十分であったかを如実に物語る。

「英語民間試験」に引き続き、大学入試改革のもう一つの目玉である「記述式問題」も批判の焦点となっている。記述式問題で思考力、判断力、表現力を測るのが目的だそうであるが「自己採点ができない」「採点者によって評価が異なるのではないか?」などの疑念が次々と巻き起こっている。なぜ政府がこのように「改革」を急いでいるのだろうか?

新聞報道:2019年8月30日、大学入学共通テストの記述式問題の採点業務委託先がベネッセコーポレーションに決定した。落札額は約61億6000万円。
「ベネッセ」は、全国津々浦々の高校に、公開模試や受験情報の提供などでしっかりと食い込んでいる会社である。その会社が採点業務を引き受けるというのだ。なるほど「英語民間試験」においても「特定業者」6団体の中にベネッセが主催する英語検定GTEC(ジーテック)がしっかり食い込んでいる。ここに、文科省とベネッセとの癒着が疑われる。
2019年11月7日の新聞報道:「2020年度の大学入学共通テストへの導入が延期された英語民間試験に関し、実施団体の一つであるベネッセの関連法人に旧文部省、文部科学省から2人が再就職していたことが明らかになった。」
ベネッセとGTECを共催しているCEES(進学基準研究機構)の理事長は元文部次官の佐藤禎一氏である。ベネッセグループ福武財団の理事は元文部省補佐官の鈴木寛氏である。

これは「第二の加計疑惑か?」などという声も上がりそうだが、問題は「官民癒着」だけに止まらない。

こんな情報もある。2019年4月頃、下村博文衆院議員が「英語民間試験」に消極的だった東京大学五神総長と幹部を自民党本部に呼びつけ、「センター試験廃止は教育再生実行会議で決まっている」「これ以上、遠藤さん※を困らせるな」と叱責した(下村氏は否定)。この直後、東大は一転して「“英語民間試験”を使う方向で検討を始めた」(4月27日)となった。
(※遠藤利明氏は自民党の教育再生実行本部長として「英語民間試験」を盛り込んだ教育改革案を作成した。)

つまり、下村氏の恫喝(本人は否定)に見られる如く、現在の教育行政を振り回しているのは、文部科学省でもなく、中央教育審議会(中教審)でもなく、安倍首相の私的諮問機関である「教育再生実行会議」なのである。

「教育再生実行会議」の前身は安倍第一次内閣の時の2006年、閣議決定により設置した「教育再生会議」だった。この組織は中教審という国の教育行政に関する審議会があるにもかかわらず、安倍首相に近い人々や、御用学者を集めて作られたもので、教育現場からの代表や教育行政、カリキュラムに精通した専門家は僅かしかいなかった。結局安倍内閣が2007年に退陣したため、教育再生会議は2008年1月に「徳育と体育の充実」「ゆとり教育の見直し」「英語教育、理科教育の抜本的改革」などを含む最終報告を提出し解散した。

そして、第二次安倍内閣が発足した2013年に、再び官邸に「教育再生実行会議」が設置されたのである。この会議の主導的役割を果たしたのが文部科学大臣兼任の下村博文氏であり、文部科学大臣兼教育再生担当大臣の萩生田光一氏であった。2019年9月に安倍首相の「側近中の側近」である萩生田氏が文部科学大臣に就任したことは、「官邸から、中教審や文科省の頭ごなしに教育理念・教育行政を直接命令する」という動きが本格化したことに他ならない。
千葉大の小林正弥教授は次のように述べている。
「現政権の思想は、第一に柱である改憲につながる国家主義、第二に市場経済の原理を最大限活用し、富裕層に有利になる“ネオリベラル”の二つがある。」
教育再生実行会議は第二の思想に基づいて活動している。入試に「英語民間試験の活用」「記述式問題の導入」は教育の民営化の表れであり、「アベノミクス」(最近は全く聞かれなくなった死語)の「企業の成長戦略」につながるものである。今や教育は「市場」であり、受験産業と国家が一体化し、ベネッセは「御用商人」化している。官邸の強引な手法は、既に「モリ・カケ」問題などの矛盾を露呈しているが、教育再生実行会議が強力にてこ入れした小学校での正式な教科「英語」導入(2020年実施)も、現場は混乱するだけで、大した成果は生まれないだろう。日本の教育は混乱するばかりである。

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