萩生田文科大臣「英語民間試験見送り」では済まない「身の丈」発言の本質

2020年大学入試共通テストに導入予定の「英語民間試験」について、経済格差や地域格差を広げるのではないか?という懸念や批判に対して、10月24日、萩生田文科大臣はBSフジ「プライムニュース」において次のように語った(生出演)。

「あの、そういう議論もね、正直あります。ありますけれど、じゃあそれ言ったら、『あいつ予備校通っててずるいよな』って言うのと同じだと思うんですよね。だから、裕福な家庭が回数受けて、ウォーミングアップできるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないけど、そこは、自分の、あの、私は身の丈に合わせて、2回を選んで※、きちんと勝負してがんばってもらえば・・・。」
(※最大2回受験することになっている。)

萩生田光一氏は安倍首相の側近中の側近であることは良く知られているが、こうして、彼の発言を文字に起こすと、何とも歯切れの悪い、というか没論理的な内容に驚かされる。
ここで非常に気になるのは、彼が大学入学試験制度のシステム上の問題と、受験生が自発的に選択する「予備校通い」を同一視していることである。

そもそも、「英語民間試験」は、2013年、安倍首相側近の下村博文氏や有識者で構成された「教育再生実行会議」が「外部検定試験の活用」を提言したことから、その実現が促進されたものである。いわば、国家が推進した教育プロジェクトだ。
そのプロジェクトは本来、次の原則に則り行なわれなければならない。

日本国憲法第14条第1項:「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。」

日本国憲法第26条:「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」

教育基本法第3条(教育の機会均等):「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」

ところが、「英語民間試験」の導入は、早い話が、「金持ちの子弟はどんどん受けられ、貧乏人や田舎住まいの子弟は受けることが難しい」という、経済的・地域的格差が生まれる恐れがあるというのだ。これは憲法や教育基本法に反する制度改悪である。にもかかわらず、萩生田氏は予備校選択の問題とゴチャゴチャにして、新制度を正当化している。彼の「論理」は「問題のすりかえ」「問題の矮小化」と言うべきものである。「身の丈に合わせて」などは差別を国が正当化するもので、非常に無責任な発言である。
確かに現在の教育の現状は格差社会を反映している。まさに「貧富の差」だ。東大生の親の平均収入がどのくらいか調べれば、すぐ分かる。国は、それを是正し、「教育の機会均等」を図らなければならないのに、教育行政の長が、逆に現状を肯定するような発言をしているのだ。

萩生田氏は10月28日、「国民、とくに受験生に不安を与えかねない説明だった」と謝罪したが、実施の方向は変えないと強弁した。しかし、批判が益々強まると、11月1日の記者会見で、「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べて、「英語民間試験」は、2020年度は見送ると発表した。「身の丈」発言は判断に影響していないとも述べた。何を今更だ。萩生田氏の「自信」はそんなにコロコロ変わるものだろうか?

更に、萩生田大臣の「身の丈」発言は単なる失言ではなく、安倍政権の教育観や思想の本質を表わしていることにも注意したい。
千葉大の小林正弥教授は「現政権の思想は、第一に柱である改憲につながる国家主義、第二に市場経済の原理を最大限活用し、富裕層に有利になる『ネオリベラル』の二つがある」と説明している。(東京新聞2019.11.2「こちら特捜部」)
小林氏は「今回の問題はネオリベラルの流れ。萩生田氏の身の丈発言は失言ではなく、この試験制度の本質そのものであり、それがストレートに出た。だから反省がない。本来、国が公平を確保すべき入試に、特定業者を使う仕組みをつくる発想そのものが問題だ。」

規制緩和や市場原理を持ち込む手法は小泉内閣の時にさかんに宣伝されたが、安倍内閣は遂に、それを教育の中に持ち込んだのである。この「入試に特定業者を使う仕組み」こそ、まさに「アベノミクス」の「成長戦略」に他ならない。この「特定業者」は英検やGTEC※など6団体で、全国の受験生の受験料が流れ込む。今や教育は市場となっており、受験産業と国家は一体化しつつある。これが我々の望む教育の姿なのだろうか?
「英語民間試験」は「見送り」でなく「廃止」が望ましい。プロジェクトを取り下げ、「日本人の英語力を高めるにはどうしたら良いか?」再度議論すべきである。
(※GTEC(ジーテック)ベネッセコーポレーションの英語検定)

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