世界は退行・縮小に向かっている

《制裁と報復の第4弾発動》
2019年9月1日、トランプ大統領は国内産業界の懸念を押し切って、対中国制裁関税を強行した。2018年7月に第1弾(340億ドル・25%)を発動して以来、今回が第4弾となる。対象は靴、スマートウォッチ、薄型TVなどの中国産輸入品1120億ドル(約12兆円)で、15%の追徴課税をかける。この制裁関税が従来と異なるのは、課税対象品目として、家電や衣料品などの生活消費財に踏み込んだことである。
これに対して中国は報復として、原油、大豆など750億ドルの米産品1717品目に最大10%の追加関税をかけることを発表した。このような制裁と報復の連鎖が1年以上続いている。

《1930年代の保護関税率を超える》
1日の追加関税発動で、米国の対中国平均関税率は21%を超えることになり、1930年代、米国が行なった保護関税政策の全輸入品関税平均20%を上回る異常事態となった。1930年代の保護関税政策とは何だろう?

《1930年代のブロック経済の帰結は》
1930年代、世界恐慌下の欧米列強は自国第一主義をとり、排他的なブロック経済を敷いた。英国は1932年に保護関税法を成立させ、オタワ会議を開き、英連邦内では特恵関税の厚遇を与える一方で、諸外国からの商品には高関税をかけた。(スターリング・ブロック)
米国もドル・ブロック、フランスはフラン・ブロックを敷き、これによって世界は「植民地を持てる国」と「持たざる国」の対立が激化し、ドイツ、イタリア、日本は軍備拡大による軍需インフレを断行し、軍事侵略による自給自足の生存権建設を目指した。そして世界は破滅へと向かって行った。

《戦争の反省と貿易の自由化》
戦争への痛苦な反省から国際社会は戦争を抑止するシステムを作り始めた。連合国は世界大戦の要因を、大恐慌による世界経済の解体と、ブロック経済による各国の閉鎖的経済に求め、大戦後、貿易の自由化を求めるうごきが活発化した。既に大戦中に、ブラトンウッズ協定を結んで国際通貨体制を固め、1947年には「関税と貿易に関する一般協定」(GATT)を成立させて、世界的規模での貿易の自由化を推進した。これは1995年WTOに発展した。

《トランプの逆行》
アメリカ第一主義を掲げたトランプ大統領は、世界が積み重ねて来た、これらの国際協調体制を尊重せず、むしろ軽視して時代に逆行しようとしている。「人、モノ、金」が国境を越えて自由に動くグローバル経済を縮小させ、国際外交を経済的利益を目的とした「かけひき」としてしか理解せず、己の権力の維持に利用しようとしている。
「トランプは歴史を理解する能力に欠けるし、歴史に対する興味もない。・・・アメリカ合衆国がこれまで防衛してきたと主張する価値観には全く関心がない。そうした価値観とは、民主主義、規則に則った世界秩序、国際条約の重要性、人権ならびに市民権の擁護、最適な多国間協力という理想などである。」(ジョン・W・ダワー『アメリカ・暴力の世紀』)

《トランプの威を借りる安倍政権》
トランプの忠実なる下僕、安倍首相は,2019年8月に対韓輸出規制を発表し、トランプと同じようなことを始めた。これは元徴用工問題での韓国最高裁の判決に対しての報復であることは明らかだ。安倍は外交的協議を粘り強く行なうことをせず、彼が提唱する自由貿易体制もかなぐり捨てて、経済的な威嚇で相手を屈服させようとしている。「なぜ対韓輸出規制をするのか」ということを、国民に説明せず、ただ「安保上の懸念」という訳のわからない理由で頑なに「制裁」を続けている。この問題が長期化すれば、日韓両国の経済に打撃を与えることは明白だ。

《核秩序の破壊》
トランプの一国主義的政策は核秩序の破壊に向かっている。2015年に締結された「イラン核合意」をトランプは一方的に破棄し(2018年)、国際協調体制を破壊し、イランに対する貿易規制を強めている。イランはこれに反発し、核合意の定めたウラン濃縮活動の限度を超えようとしている。イランを敵視するサウジアラビアが、これに乗じて核開発を急ぐ危険性も出てきている。
更にトランプは、1988年に締結されたINF全廃条約を一方的に破棄した。これは中国の中距離ミサイル増強に対抗するためと考えられているが、以後、ロシアと米国との間の核管理体制が崩壊し、両国が再び核兵器増強に走り出す危険性が出て来た。

《過去の亡霊再び》
第一次大戦後、ベルサイユ体制とワシントン体制の下に、世界は国際協調の時代を迎えたが、1929年の世界恐慌とファシズム国家の台頭の前に、それは脆くも崩壊し、世界で2千万人以上の死者を出した大戦争へと発展した。平和な時代は約10年間しか持たなかった。
今、急速に世界は退行しはじめ、第二次大戦直前にも似た自国優位の閉鎖的世界に戻りつつある。日本のワイドショーでは連日、韓国の文政権を嘲笑し、日本人が過去にしでかした歴史を忘れ去ろうとしている。トランプの強権的外交とそれに追随する安倍の政治が、過去の亡霊を再び呼び起こしてしまうことを危惧するものである。いや、彼ら自身が既に亡霊となっているのかもしれない。

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